ごあいさつ

「救急現場から集中治療までをトータルで管理」


ICUを舞台に各科連携で生命を守る(ICUチーム)

熊本大学医学部附属病院 高次救急集中治療部は平成14年の病院新館新築を機に移転・再スタートしました。 救急を専門とする教授を中心に救急専門医、消化器外科、麻酔科、呼吸器内科、皮膚科の計6人の医師が、集中治療部を運営しています。 それ以外にも、各科より6~10名程度の応援医師を確保することで、24時間体制で集中治療担当医3名体制を取っています。

夜勤は17時からの勤務で翌日は勤務空け、各自の勤務時間は週40時間に収まっています。 集中治療部の医師は、それぞれの専門を生かしながら、弱い部分はカバーしあうという方法を取っています。

侵襲の大きい外科手術後は合併症が心配で、手術中は麻酔科医の管理が重要になりますが、術後には集中治療医が外科医と協力することで患者さんを多方面から治療することができます。 また、救急外来から集中治療室に運ばれ、集中治療が必要な重症患者さんに対しても、集中治療部が中心になり各診療科とも連携することで、一貫した治療方針を立て実行することができます。

8床から11床に増床したICUは、ナースステーションの近くから順に重症患者が配置されています。特に感染症が心配な患者は、外の空気が入りにくいよう工夫した3つの個室で対応します。

各ベッドに設置した人工呼吸器や患者監視装置、精密点滴装置などはシーリングアームを使って天井から吊るす方式をとっており、床面の配線が邪魔にならないため医師や看護師がスムーズに動けるようになっています。

呼吸や循環などのバイタルサインや検査データはコンピュータで管理し、看護師がベッドサイドで確認操作をすると、LANケーブルを通じてナースステーションのコンピュータにも自動登録され、電子熱型表ができるようになっています。

また、集中治療部は血液浄化療法部とも隣接しているので、腎不全や敗血症など持続的に血液の浄化が必要な患者さんの治療にも対応しやすくなっています。

救急・総合診療部門ERチームの紹介

熊本大学医学部附属病院は熊本県保健医療計画においては三次救急医療機関に位置づけられていますが、熊本県では救命救急センターが熊本赤十字病院と熊本医療センター、済生会熊本病院の3カ所に設置され、いずれも大学病院と近距離にあります。救急・総合診療部ではこれら3つの救命救急センターと協力しながら、県内全域からの重症救急患者の受け入れに当たっています。

救急患者数も順調に増加し、院内各診療科との協力体制も整ってきています。 今後は、平成21年度より3ヶ月間の必修となる初期研修医のための救急研修の場として、実践に即した指導のみならず、毎週行われる症例検討の充実や空いた時間を利用したシュミレーショントレーニング、指導医のレベルアップなどを目指しています。

ヘリ搬送の重要性

熊本県は県域が広大でかつ高度医療機関は熊本市内に集中しています。 熊本市内まで救急車で2時間以上かかる地域の救急実情は厳しいものです。 熊本県は救急医療の地域間格差是正の必要性を感じていましたが、明確な解決策がありませんでした。

そんな中、平成13年に熊本県に防災消防ヘリ(愛称「ひばり」)が導入されました。 しかしながら、防災ヘリは多目的であり、災害専用とする位置づけでは、事実上ほとんど活躍の場がない状態でした。 そこで、我々は熊本県防災消防航空センターと協議し、防災ヘリをできるだけ救急患者搬送に活用することとしました。

その結果、「ひばり」の緊急運航件数は導入した13年から25年まで右肩上がりに増加し、平成25年は304件救急患者の広域搬送に利用されています。 救急車で2時間以上かかる天草地域から、たった15分で熊本市上空に飛べるヘリの性能は大変魅力的です。

このような現状をふまえ、私たちは『熊本県ドクターヘリ導入推進協議会』を平成20年2月に設立し、熊本県にもドクターヘリ導入を実現(平成24年1月運航開始)しました。防災ヘリとドクターヘリ(熊本赤十字病院)の2機体制で円滑なヘリ搬送が行われ、救急ヘリの「熊本方式」と呼んでいます。